第33回 エンバカデロ・デベロッパーキャンプでDelphi Linuxサポートを初公開
2016年12月9日、東京・恵比寿のEBiS 303カンファレンススペースで「エンバカデロ・デベロッパーキャンプ」が開催された。33回目となるこのイベントは、ボーランドの開発ツール部門の分離を発表した2006年から継続的に開催されており、今年も2回目の開催となる。
2015年10月にアイデラの傘下となったエンバカデロは、開発者にフォーカスした新戦略を発表して以来、開発者コミュニティとの積極的なコミュニケーションを積み重ねてきた。日本においても、ジェネラルマネージャのアタナス・ポポフが複数回来日し、ユーザーの皆さんとの意見交換会を開くなど、意欲的だ。
今回、最新アップデートとなるRAD Studio 10.1 Berlin Update 2 Anniversary Editionの紹介に加え、特に注目を集めたのは、現在開発を進めているDelphi / C++BuilderのLinuxサポートだ。Linuxプラットフォームサポートは、以前から製品ロードマップには登場していたが、具体的に動くツールとして紹介されるのは、これが初めてだ。
登壇したワールドワイドセールスディレクターを務めるシェリー・シルヘィビーは、「Linuxサポートを提供するこのリリースは、私たちエンバカデロがクロスプラットフォームに寄せるメッセージを次の次元へと高めるものになります」と語った。
「Linuxサポートの開発にあたっては、思いのほかさまざまな課題に直面し、その解決に一年強の歳月を要した」とのことだ。しかし、そうした課題を克服することで、Delphi / C++の将来に対するコミットメントを果たしていくと力説した。
Delphi / C++BuilderのLinuxサポートでは、64bit Linux向けネイティブコンパイラを搭載し、Linux向けツールチェインを提供する。WindowsのIDEで開発したコードは、ターゲットプラットフォームにLinux 64-bitに設定することで、Linux向けにビルドでき、PAServerを介して、Linuxマシンに配置、リモートデバッグ可能だ。
会場では、セールスコンサルタントの井之上和弘が、Linux向けアプリケーションのコードレベルのデバッグを行い、ステップ実行、変数の評価などを実行してみせた。
今回のLinuxサポートでは、Delphi / C++Builderのサーバーサイドアプリケーションの構築に対応する。これまでのランタイムライブラリ、非ビジュアルのコンポーネントも利用可能で、RTL、DB RTL、IOUtils(およびファイルシステムアクセス)、FireDAC、 HTTP、REST、Cloud、WebBroker、Apache integration、DataSnap、 EMS/RAD Server、JSON、XML、SOAP、Indyなどが、サポート対象のライブラリとしてリストされた。
つまり、データアクセスやインターネット通信、バックエンドシステムとの接続を行うようなサーバーアプリケーション、中間サーバー機能などは、ターゲットプラットフォームを切り替えるだけで、WindowsとLinuxの双方に対してネイティブコードをビルドできるようになる。これは、プラットフォームの拡張性、柔軟性といった点で有利だ。既存のDelphi / C++Builderアプリケーション開発者も、従来コード資産を、容易にLinuxプラットフォームに拡張できるようになるのだ。
今回紹介したLinuxサポートプレビューは、RAD Studioの次期バージョンプレビューとして評価できる。ベータバージョンとなるため、秘密保持契約が必要(オンライン署名)だが、早期にLinuxプラットフォーム向けアプリケーション構築を試すことができるのは魅力だ。
参加資格は、RAD Studio / Delphi / C++Builderの有効なアップデートサブスクリプションプログラムに加入していること。最新バージョンに標準で付属するプログラムなので、最新バージョンを購入すれば参加可能ということになる。
デベロッパーキャンプのセッションビデオは、YouTubeに順次公開されている。